SIGNAL

Section: Linux Programmer's Manual (7)
Updated: 2002-06-13
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名前

signal - 使用可能なシグナルの一覧  

説明

Linux は POSIX 信頼シグナル (reliable signal; 以後 "標準シグナル"と表記) と POSIX リアルタイムシグナルの両方に対応している。  

シグナル処理方法

シグナルはそれぞれ現在の「処理方法 (disposition)」を保持しており、 この処理方法によりシグナルが配送された際にプロセスが どのような振舞いをするかが決まる。

後述の表の "動作" の欄のエントリは各シグナルのデフォルトの 処理方法を示しており、以下のような意味を持つ。

Term
デフォルトの動作はプロセス終了。
Ign
デフォルトの動作はこのシグナルの無視。
Core
デフォルトの動作はプロセス終了とコアダンプ出力 (core(5) 参照)。
Stop
デフォルトの動作はプロセスの一時停止。
Cont
デフォルトの動作は、プロセスが停止中の場合にその実行の再開。

プロセスは、 sigaction(2) や signal(2) を使って、シグナルの処理方法を変更することができる (signal(2) の方が移植性は低い)。シグナルの配送時に起こる動作として プロセスが選択できるのは、次のいずれか一つである。 デフォルトの動作を実行する、シグナルを無視する、 シグナル ハンドラ (signal handler) でシグナルを捕捉する。シグナルハンドラとは、シグナル配送時に 自動的に起動されるプログラマ定義の関数である。

シグナルの処理方法はプロセス単位の属性である。 マルチスレッドのアプリケーションでは、あるシグナルの処理方法は 全てのスレッドで同じである。  

シグナルマスクと処理待ちシグナル

シグナルは ブロック (block) されることがある。ブロックされると、そのシグナルは その後ブロックを解除されるまで配送されなくなる。 シグナルが生成されてから配送されるまでの間、そのシグナルは 処理待ち (pending) であると呼ばれる。

プロセス内の各スレッドは、それぞれ独立な シグナルマスク (signal mask) を持つ。シグナルマスクはそのスレッドが現在ブロックしている シグナル集合を示すものである。 スレッドは、 pthread_sigmask(3) を使って自分のシグナルマスクを操作できる。 伝統的なシングルスレッドのアプリケーションでは、 sigprocmask(2) を使って、シグナルマスクを操作できる。

生成されるシグナル (したがって処理待ちとなるシグナル) には、 プロセス全体宛てと特定のスレッド宛てがある。 例えば、プロセス全体宛てのシグナルは kill(2) を使って送信される。 特定のマシン語の命令の実行の結果として生成される、 SIGSEGVSIGFPE などのシグナルは、スレッド宛てとなる。 また、 pthread_kill(3) を使って特定のスレッド宛てに生成されたシグナルも スレッド宛てとなる。 プロセス宛てのシグナルは、そのシグナルをブロックしていないスレッドのうち いずれかの一つに配送することができる。そのシグナルをブロックしていない スレッドが複数ある場合、シグナルを配送するスレッドはカーネルが 無作為に選択する。

スレッドは、 sigpending(2) を使って、現在処理待ちのシグナル集合を取得することができる。 この集合は、プロセス宛ての処理待ちシグナルと 呼び出したスレッド宛てのシグナルの両方から構成される。  

標準シグナル

Linux は以下に示す標準シグナルに対応している。 シグナル番号の一部はアーキテクチャ依存であり、"値" 欄に示す通りである。 (3つの値が書かれているものは、 1つ目が alpha と sparc で通常有効な値、 真ん中が i386, ppc, sh での値、最後が mips での値である。 - はそのアーキテクチャにおいて対応するシグナルがないことを示す。)

最初に、POSIX.1-1990 に定義されているシグナルを示す。
シグナル動作コメント




SIGINT 2Termキーボードからの割り込み (Interrupt)
SIGQUIT 3Coreキーボードによる中止 (Quit)
SIGILL 4Core不正な命令
SIGABRT 6Coreabort(3) からの中断 (Abort) シグナル
SIGFPE 8Core浮動小数点例外
SIGKILL 9TermKill シグナル
SIGSEGV11Core不正なメモリ参照
SIGPIPE13Termパイプ破壊: 読み手の無いパイプへの書き出し
SIGALRM14Termalarm(2) からのタイマーシグナル
SIGTERM15Term終了 (termination) シグナル
SIGUSR130,10,16Termユーザ定義シグナル 1
SIGUSR231,12,17Termユーザ定義シグナル 2
SIGCHLD20,17,18Ign子プロセスの一旦停止 (stop) または終了
SIGCONT19,18,25Cont一旦停止 (stop) からの再開
SIGSTOP17,19,23Stopプロセスの一旦停止 (stop)
SIGTSTP18,20,24Stop端末 (tty) より入力された一旦停止 (stop)
SIGTTIN21,21,26Stopバックグランドプロセスの tty 入力
SIGTTOU22,22,27Stopバックグランドプロセスの tty 出力

シグナル SIGKILLSIGSTOP はキャッチ、ブロック、無視できない。

次に、 POSIX.1-1990 標準にはないが、 SUSv2 と POSIX.1-2001 に記述されているシグナルを示す。
シグナル動作コメント




SIGPOLLTerm ポーリング可能なイベント (Sys V)。 SIGIO と同義
SIGPROF27,27,29Termprofiling タイマの時間切れ
SIGSYS12,-,12Coreルーチンへの引き数が不正 (SVr4)
SIGTRAP5Coreトレース/ブレークポイント トラップ
SIGURG16,23,21Ign ソケットの緊急事態 (urgent condition) (4.2BSD)
SIGVTALRM26,26,28Term仮想アラームクロック (4.2BSD)
SIGXCPU24,24,30CoreCPU時間制限超過 (4.2BSD)
SIGXFSZ25,25,31Coreファイルサイズ制限の超過 (4.2BSD)

Linux 2.2 以前では、 SIGSYS, SIGXCPU, SIGXFSZ および SPARC と MIPS 以外のアーキテクチャでの SIGBUS のデフォルトの振る舞いは (コアダンプ出力なしの) プロセス終了であった。 (他の Unix システムにも SIGXCPUSIGXFSZ のデフォルトの動作がコアダンプなしのプロセス終了のものがある。) Linux 2.4 では、POSIX.1-2001 での要求仕様に準拠して、 これらのシグナルで、プロセスを終了させ、コアダンプを出力する ようになっている。

次にその他の各種シグナルを示す。
シグナル動作コメント




SIGEMT7,-,7
SIGSTKFLT-,16,-A 数値演算プロセッサにおけるスタックフォルト (未使用)
SIGIO23,29,22A入出力が可能になった (4.2BSD)
SIGCLD-,-,18 SIGCHLD と同義
SIGPWR29,30,19A電源喪失 (Power failure) (System V)
SIGINFO29,-,- SIGPWR と同義
SIGLOST-,-,-Aファイルロックが失われた
SIGWINCH28,28,20B ウィンドウ リサイズ シグナル (4.3BSD, Sun)
SIGUNUSED-,31,-A未使用シグナル (SIGSYS となるだろう)

(シグナル 29 は alpha では SIGINFO / SIGPWR だが、sparc では SIGLOST である。)

SIGEMT は POSIX.1-2001 に規定されていないが、 その他の多くの Unix システムに存在する。 デフォルトの動作は多くの場合、コアダンプ出力を伴うプロセスの終了である。

SIGPWR は (POSIX.1-2001 に規定されていないが) このシグナルが存在する 他の Unix システムでは多くの場合、デフォルト動作は無視である。

SIGIO は (POSIX.1-2001 に規定されていないが) いくつかの他の Unix システムでは デフォルト動作は無視である。

 

リアルタイムシグナル

対応しているリアルタイムシグナルの範囲は、マクロ SIGRTMINSIGRTMAX で定義される。 POSIX.1-2001 では、少なくとも _POSIX_RTSIG_MAX (8) 個のリアルタイムシグナルに対応した実装が要求されている。

Linux は、32 個の異なるリアルタイムシグナルに対応しており、 その番号は 33 から 64 である。 しかしながら、glibc の POSIX スレッド実装は、 内部で 2個 (NPTL の場合) か 3個 (LinuxThreads の場合) の リアルタイムシグナルを使用しており (pthreads(7) 参照)、 SIGRTMIN の値を適切に (34 か 35 に) 調整する。 利用可能なリアルタイムシグナルの範囲は glibc のスレッド実装により 異なるし (使用するカーネルと glibc により実行時にも変化する)、 Unix システムの種類によっても異なる。したがって、 プログラムでは「ハードコーディングした数字を使ってのリアルタイムシグナルの 参照は決してすべきではなく」、代わりに SIGRTMIN+n の形で参照すべきである。また、 SIGRTMIN+n が SIGRTMAX を超えていないかのチェックを (実行時に) 適切に行うべきである。

標準シグナルと異なり、リアルタイムシグナルには 事前に定義された意味はない。 リアルタイムシグナルの全部をアプリケーションで定義した用途に使える。 (但し、LinuxThreads 実装で、リアルタイムシグナルの番号のうち 最初の 3つが使用されている点に注意すること)

ハンドリングしないリアルタイムシグナルのデフォルトの動作は 受信したプロセスの終了である。

リアルタイムシグナルは以下の特徴がある:

1.
リアルタイムシグナルは複数の実体をキューに入れることができる。 一方、標準シグナルの場合、そのシグナルがブロックされている間に 同じシグナルの複数のインスタンスが配送されても、 1 つだけがキューに入れられる。
2.
シグナルが sigqueue(2) を用いて送信された場合、 付属データ (整数かポインタ) をシグナルと共に送信できる。 受信側プロセスが sigaction(2) に SA_SIGINFO フラグを指定してシグナルハンドラを設定した場合、 このデータは siginfo_t 構造体の si_value フィールド経由でハンドラの第 2 引き数として渡され、 利用することができる。 さらに、この構造体の si_pidsi_uid フィールドでシグナルを送信したプロセスの PID と実ユーザ ID を 得ることができる。
3.
リアルタイムシグナルでは配送される順序が保証される。 同じタイプのリアルタイムシグナルは送信された順番に到着する。 異なるリアルタイムシグナルが一つのプロセスに送信された場合、 番号の小さいシグナルから先に到着する。 (つまり小さい番号のシグナルが高い優先順位を持つ。)

一つのプロセスに対して標準シグナルとリアルタイムシグナルの両方が 処理待ちの場合、POSIX はどちらが先に配送されるかを規定していない。 Linux では、他の多くの実装と同様、このような場合には 標準シグナルが優先される。

POSIX によれば、1 プロセス毎に最低 _POSIX_SIGQUEUE_MAX (32) 個のリアルタイムシグナルをキューに入れられるべきとしている。 しかし、 Linux では違った実装になっている。カーネル 2.6.7 までは (2.6.7 を含む)、全プロセスでキューに入っているリアルタイムシグナル の数の合計についてシステム全体での制限がある。 この制限は /proc/sys/kernel/rtsig-max ファイルで見ることができ、 (権限があれば) 変更もできる。 関係するファイルとして、 /proc/sys/kernel/rtsig-nr を見ることで、いくつのリアルタイムシグナルが現在キューに入っているかを 知ることができる。 Linux 2.6.8 で、これらの /proc 経由のインターフェースは、 RLIMIT_SIGPENDING リソース制限に置き換えられた。 これは、キューに入るシグナル数に関してユーザ単位に 上限を指定するものである。 詳しくは setrlimit(2) を参照。  

非同期シグナルで安全な関数 (async-signal-safe functions)

他の場所の処理はプログラム実行の任意の箇所で中断されるため、 sigaction(2) や signal(2) で登録するシグナルハンドラ関数には非常に注意しなければならない。 POSIX には「安全な関数 (safe function)」という概念がある。 シグナルが安全でない関数の実行を中断し、かつ handler が安全でない関数を呼び出した場合、プログラムの挙動は未定義である。 POSIX.1-2003 では、 シグナルハンドラ内での安全な呼び出しを保証することが必須の関数として 以下が規定されている。

_Exit(), _exit(), abort(), accept(), access(), aio_error(), aio_return(), aio_suspend(), alarm(), bind(), cfgetispeed(), cfgetospeed(), cfsetispeed(), cfsetospeed(), chdir(), chmod(), chown(), clock_gettime(), close(), connect(), creat(), dup(), dup2(), execle(), execve(), fchmod(), fchown(), fcntl(), fdatasync(), fork(), fpathconf(), fstat(), fsync(), ftruncate(), +getegid(), +geteuid(), +getgid(), +getgroups(), +getpeername(), +getpgrp(), +getpid(), +getppid(), +getsockname(), +getsockopt(), +getuid(), kill(), link(), listen(), lseek(), lstat(), mkdir(), mkfifo(), open(), pathconf(), pause(), pipe(), poll(), posix_trace_event(), pselect(), raise(), read(), readlink(), recv(), recvfrom(), recvmsg(), rename(), rmdir(), select(), sem_post(), send(), sendmsg(), sendto(), setgid(), setpgid(), setsid(), setsockopt(), setuid(), shutdown(), sigaction(), sigaddset(), sigdelset(), sigemptyset(), sigfillset(), sigismember(), signal(), sigpause(), sigpending(), sigprocmask(), sigqueue(), sigset(), sigsuspend(), sleep(), socket(), socketpair(), stat(), symlink(), sysconf(), tcdrain(), tcflow(), tcflush(), tcgetattr(), tcgetpgrp(), tcsendbreak(), tcsetattr(), tcsetpgrp(), time(), timer_getoverrun(), timer_gettime(), timer_settime(), times(), umask(), uname(), unlink(), utime(), wait(), waitpid(), write().  

準拠

POSIX.1  

バグ

SIGIOSIGLOST は同じ値を持っている。 SIGLOST はカーネルのソースではコメントアウトされている。 しかし、ソフトウェアによってはビルドの過程でシグナル 29 を SIGLOST とみなしてしまうものがある。  

関連項目

kill(1), kill(2), killpg(2), setitimer(2), setrlimit(2), sgetmask(2), sigaction(2), signal(2), sigpending(2), sigprocmask(2), sigqueue(2), sigsuspend(2), sigwaitinfo(2), bsd_signal(3), raise(3), sigvec(3), sigset(3), strsignal(3), sysv_signal(3), core(5), proc(5), pthreads(7)


 

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シグナルマスクと処理待ちシグナル
標準シグナル
リアルタイムシグナル
非同期シグナルで安全な関数 (async-signal-safe functions)
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Time: 04:32:03 GMT, November 19, 2007