電車移動の前に軽い気持ちで買ったが両方とも意外なヒット.
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『戦う将棋指し 2』別冊宝島編集部 編 (宝島社文庫):
羽生善治, 佐藤康光, 藤井猛 のインタビューや
米長邦雄と瀬戸内寂聴の対談など.
別冊宝島を文庫化したものらしく,
たくさんの著者・編集者が別々に書いた記事の寄せ集め.
おもしろく読めたものとそうでないものがはっきり別れるが、
全体として価格分 (\600) の価値はある感じ.
羽生へのインタビュー記事は,
畠山直毅によるものと茶木則雄のものと, 二つある.
切り口も違うし, その場の雰囲気の再現度
*1
も異なっていて興味深い.
個人的には畠山の方が圧倒的に読んでいておもしろかったが.
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『翻訳はいかにすべきか』柳瀬尚紀 (岩波新書 652):
丸山真男らの集英社版に対抗 (?) してジョイスの「ユリシーズ」の新訳を出版し,
話題になっている著者が, 翻訳に対して語った本.
5 章からなるが, 個人的には 1〜3 章を興味深く読んだ.
- 代名詞を駆逐せよ.
- 翻訳はまたとない精読の機会である.
- 辞典語の切貼りは×
- 原文の情報は耳に届く順序で訳出せよ
など, ぼんやりと意識していたことをクリアにしてもらえた.
JF/JM などで翻訳を手がけているひとには是非一読を勧めたい.
4 章はユリシーズの両訳の比較,
5 章は文体遊び・言葉遊びを日本語に移す際の苦心について.
自分はもとよりジョイスらの原文を読みこなすことはできないが、
原文を正しく解釈している, という点では
筆者柳瀬氏の主張に軍配が上がろうものの、
どうも柳瀬氏の翻訳文には
「無理やり日本語という枠に押し込めた」
的な読みにくさを正直感じてしまう。
日本語「小説」の書き手としての柳瀬氏の技量が、
例えば別所で参考に引かれている二葉亭四迷などに比べて
どうしても若干劣っていることが原因なのかもしれない.
本書では、流れの中で話題はあっちこっちへ飛び、
余談に継ぐ余談もしょっちゅう
*2
、なので飛ばし読みするのに適した本ではない.
とはいえ読みにくかったり論旨のジャンプがあるわけではない.
2〜3 時間で読めてしまう分量なので、
時間を取っての一気読みをおすすめ.
*1: インタビュアーの筆力・芸風に依存するのだろうが.
*2: 大学の先生って, こういうタイプの話し方するひとが実際多い :-)